生体分析~三種の神器
(硝酸イオンメーター、カリウムイオンメーター、糖度計)
1 硝酸イオンとカリウムイオンの測り方
前もってイオンメーターの校正をしておきます。(説明書に従う)
以下は、ナスを事例に説明しています。
①ナス畑全体から平均的な木を10本ほど選び、活動している葉を1本につき1枚葉柄付きで採ります。(全体の平均を見たい場合)
②集めた葉と葉柄を切り分け葉柄だけにします。葉柄をハサミで細かく切り分けニンニク絞り器に詰め、搾り汁を採取します。
③搾り汁を硝酸イオンメーターのセンサー部分に入れます。MEAS(メジャー)スイッチを押して😊マークが出るまで待ち、読み取ります。
④同じ液をカリウムイオンメーターのセンサー部分に入れ、MEAS(メジャー)スイッチを押して😊マークが出るまで待ち、読み取ります。
※硝酸イオンメーターとカリウムイオンメーターは堀場製作所製のものを使用しております。
(画像はクリックすると拡大します。)
ナスにおける理想値(収穫期) ※あくまでも参考値です。 | 活動葉の葉柄の濃度 硝酸:5000ppm以下 カリウム:6000ppm以上 実の硝酸の濃度:400ppm以下 |
2 糖度計による診断
樹液の糖度差を見ることにより、栄養成長に傾いているのか、生殖成長に傾いているのか判断できます。生長点に近い葉(最新の展開葉)と古葉(下葉)の糖度差が1.5度より大きければ栄養成長傾向です。1度以下ならば生殖成長傾向と判断できます。
また、以下の方法でボケナス(艶なし果)の発生が予見できます。
正常な木 | ボケナス(艶なし果)の木 | |
生長点と下葉の糖度 | 生長点が高く下葉が低い | 生長点と下葉が同じ |
結果枝・花のヘタ部の糖度 | 上葉より花のヘタ部が高い | 上下の葉も花のヘタ部も同じ |
ナスの果実の糖度 | 花落ち部がヘタ部より1度高い | 花落ち部とヘタ部が同じ |
ナスにおける理想値(収穫期) ※あくまでも参考値です。 | 最新展開葉(6度)と古葉(5度)の糖度差:1度 花のヘタ部の糖度(8度):生長点より2度以上高い |
※糖度計診断については、「糖度計診断について」も参照。
3 診断と対策をどうするか
最後に、診断と対策をどうするかを紹介します。 例えば、生体分析で硝酸過剰なのは分かったのだけれど、硝酸過剰になった原因を探らなければなりません。肥料をやり過ぎたのか、前作までの残肥が多すぎたのか、温度管理・水管理などが適性でないのか・・・。それぞれケースバイケースでしょうが、根本原因は二つに絞られるケースが多いです。 1つは、窒素肥料が多すぎることです。ハウス栽培の場合このケースが圧倒的に多いです。しかし、窒素肥料を減らしても硝酸過剰の問題が解決しないケースも結構あります。その場合、根の数(毛細根)が少ない可能性が濃厚です。毛細根が少ないと根の先端で吸われるミネラルが少なく、硝酸同化が進みにくくなってしまうからです。さらに、主に根の先端で作られるサイトカイニンという植物ホルモンも少なく、栄養成長に傾きやすくなってしまうからです。根の数を増やすには発芽や苗づくりから見直さなければなりません。4月号で紹介されていた、低温発芽も根の数を増やす重要な技術です。 根本原因は肥料過多と根の数不足ですが、栽培の途中ではやってしまった元肥を減らすことも出来ません。そこで、対処療法としては硝酸過剰の場合は硝酸同化を促進させる葉面散布をしたり、カリ不足の場合はカリウムが含まれた資材の葉面散布をすることになります。この他にも対処法はいくつかありますが、他の作物と共通することも多いので、随時ご紹介していきます。