暴風雨対策について

台風・豪雨で作物に何が起きるのか
~雨でカリが流され、 低気圧でチッソが吸われる~

出典:『現代農業』2018年8月号、74~77ページ。(執筆者:弊社代表・高橋)以下は掲載当時の記事内容です。

葉や茎からミネラルが流亡

順調に生育していた露地のホウレンソウのカリ濃度が、台風通過前後で5000ppmから3000ppmまで下がっていたことがありました。

このように雨等によって植物体から物質が流亡する現象を「リーチング」といいます。木村和義先生の名著『作物にとって雨とは何か』(農文協)に多くの事例が紹介されています。それによると、24時間の降雨でリンゴの葉のカリウム含量の80%、カルシウム含量の50%が流亡したという報告もあります。

雨の降り方では、量や強さよりもシトシト雨のように長時間、葉が濡れているほうが流亡する量は多く、風が吹くことでリーチング速度が高まることがわかっています。また、若い葉や健全な葉よりも古い葉や障害を受けた葉のほうが、リーチング量が多くなります。葉の表面を覆うワックス量が多いほど、濡れにくくリーチングしにくいためです。

流亡した物質は土に落ち、いずれは再吸収されますが、豪雨の場合は流出してしまい、利用率は低くなります。実際、雨の後にこの現象により病気が出やすくなり品質・収量が落ちてしまうことは多々あります。

マツタケとリーチングの関係

話はそれますが、マツタケは台風の多い年に豊作になると聞いたことがあります。マツの木が風で揺さぶられると、根からマツタケの生育を促進する養分がリーチングするからだと思われます。台風が来ないときは、マツタケ発生箇所のアカマツの木の枝にロープを掛けて揺するとマツタケが出やすくなるそうです。

作物栽培においても強風による根からのリーチングが起きていると考えられます。特に株元が揺さぶられると影響は大きくなります。

また、浸水被害による根傷みによっても、水溶性のミネラルであるカリのリーチングが観測できます。

風雨による葉・根からのミネラルのリーチングと、低気圧接近時の吸水を説明した図
風や雨でミネラルはリーチングする

気圧が下がると水を吸う

畑が湛水状態にまでならなくても、低気圧が近づくだけで植物は生理的に蒸散量が増えるため水を吸収しやすくなります。

吸水が活発になると、水と一緒にチッソも多く吸収されることになります。結果として生長点で作られる植物ホルモンであるジベレリンの活性が高まり、栄養生長に向かいやすくなります。この現象は、露地栽培だけでなく施設栽培でも同様に起こりますので、気をつけてください。

つまり台風や豪雨に遭うと、作物はカリウムを失い、チッソを過剰吸収しやすくなります。結果的に、硝酸過剰の体質となり、病害虫にも弱くなってしまいます。

カリウムの補給とチッソの消化でピーマン復活

写真は植物対話農法を実践している茨城県の安藤照夫さんのハウスピーマンです。昨年10月に上陸した超大型の台風21号による浸水被害の様子です。関東地方を直撃したため、茨城県内も22日朝から翌朝にかけて暴風雨に見舞われました。

安藤さんのハウスでは、ポンプで排水するも丸2日間ピーマンが湛水状態になり、その後しおれが発生。回復するのに約2週間かかりました。周辺のピーマン農家にも同様の被害があり、諦めて植え替える人も多かったなか、安藤さんのピーマンは見事回復。年明け後は平年並みの収量・品質で、この原稿を書いている5月25日現在も収穫中です。

回復させた方法は、次の通りです。

まず、根傷みの原因となっている有害ガスを中和し土壌中に酸素を取り込むための資材「再活DF」と、新しい根を出させるための発根促進剤「発根・団粒元」も合わせて施用しました。それぞれの資材を2000倍に薄めて混用し、株元から30cmほどのところに土壌かん注。3~4日おきに3回ほど実施しました。

また、台風直撃以前から硝酸過剰にならないようカリウム資材「K元気サポート」や、過剰な硝酸を消化する「シャングー」、光合成を促進する「パワーゲン」を2週間に1回葉面散布。台風後は細胞分裂を促進する「ファイトカイニン」を加え、回数を増やして3日おきに3回葉面散布を続けました。そうした努力の結果、2週間後にはしおれは回復し、生育も戻ったのです。

湛水したピーマンのハウス(2017年10月23日)
2017年10月23日:湛水したピーマンのハウス。2日かけてポンプで排水した
根傷みによりしおれが発生したピーマン(2017年10月26日)
2017年10月26日:根傷みによりピーマンにしおれが発生。土中に酸素を取り込む資材と発根促進剤を土壌かん注。硝酸過剰対策としてカリ資材と硝酸を消化する資材を葉面散布
健全な生育を取り戻したピーマン(2018年5月15日)
2018年5月15日:健全な生育を取り戻したピーマン

台風・大雨対策に使える葉面散布剤

商品名特性
シャングー過剰な硝酸(チッソ)を消化
K元気サポートカリウムのリーチング対策、新陳代謝を活性化
リーフサポート葉のワックス層を保護
ファイトカイニン細胞の若返り促進
パワーゲン光合成促進

※露地栽培の場合、風雨前に展着剤を使うと葉のワックス層が溶けやすくなり、リーチングが増えるので注意する。

夜の高温対策に夕方かん水

7~8月の猛暑で作物がダメージを受けると、やはり硝酸過剰、カリ不足になりがちです。特に夜温が高いと、夜間にも呼吸と蒸散にエネルギーを使い、果実等への養分転流がされにくくなります。

対策としては、ハウス栽培の場合、夕方の葉面への散水や通路かん水が有効です。散水すると気化熱で葉面温度が下がり、エネルギーの消耗が抑えられます。通路かん水についても地表面温度が下がりますし、翌朝の湿度保持につながり気孔が開きやすくなります。注意したいのが夏至以降に植物の生理が栄養生長から、生殖生長傾向になり生育が緩慢となることです。そこに高温が加わると体力の消耗が大きくなります。対策としては新陳代謝と光合成を促進させる「K元気サポート」や「パワーゲン」の葉面散布が有効です。